経営企画ってどんな業務があるの?いつが忙しい?
前回、経営企画として働く上での心構えについて書きました。
この記事を読んでこう思った人が多いのではないでしょうか。
・じゃあ実際、経営企画ってどんな業務をしているのだろう?
・1年の中で、忙しい時期とかそうでもない時期とかあるのかな?
今回は、具体的な業務内容についてご説明していきたいと思います。
東証一部上場の某大手IT企業の経営企画部長(38歳)。
プロダクト企画や新規事業開発を経て経営企画として約5年。
新しい事業やプロダクトを生む0→1の辛さを経験している分、
現在は経営企画として、1を100に成長させる改善を日々検討。
データ分析大好き人間。
経営企画の仕事内容は?
経営企画の業務は、大きく下記の4つになります。
- 経営戦略・中長期計画の策定
- 短期予算策定
- 予実管理/分析とギャップフィル策定
- 事業成長に向けた取り組み(特命案件・新規事業開発・M&Aなど)
個人的には、「1. 経営戦略・中長期計画の策定」と「4. 事業成長に向けた取り組み」が経営企画の醍醐味と考えます。
「2. 短期予算策定」と「3. 予実管理/分析とギャップフィル策定」はルーティン業務に近いです。
市場の変化にどう対応するかを考える必要はあるので状況や内容はその都度異なりますが、あくまでも既存事業の中での検討のため、ある程度パターン化されてきます。
一方で「1. 経営戦略・中長期計画の策定」と「4. 事業成長に向けた取り組み」は、既存事業の枠を超えた検討を行うことも多く、難易度は高いものの非常にやりがいがある業務だと思います。
ひとつずつ説明していきます。
経営戦略・中長期計画の策定
今後5〜10年後に目指す姿と、その姿を達成するための大枠の戦略を立て、事業計画として作り上げる業務です。
上場企業であれ非上場企業であれ、事業を継続・成長させていくためには投資家からの資金が必要です。
(自己資本のみで事業を継続できているような小規模の企業は除く)
そのため、投資家向けに中長期計画(中計)を開示し、「自分たちの会社はこんな成長をしていくので、ぜひ投資してください」とアピールするのです。
中長期計画を立てる上では、経営理念、企業として目指す姿(ビジョン)から戦略に掘り下げ、その戦略を根拠とした具体的な計画としての数字に仕上げていくことが重要になります。
中長期計画を作り上げていくステップを順番にご説明します。
また各ステップについて、丸亀製麺で有名な株式会社トリドールホールディングスでの事例もご紹介しますので、参考にしてください。
経営理念
企業として、事業経営を行っていく上での思想やポリシーを言語化したものになります。
経営者がベースとして持っている経営に対する方針であり、あらゆる経営判断の軸となる考え方になります。
経営企画部門は、経営陣が発信している経営理念をしっかりと理解し、戦略や計画が経営理念に沿っているかを常に意識しておく必要があります。
Finding New Value. Simply For Your Pleasure.
トリドールグループは、
世界で通用する日本発のグローバルフードカンパニーになることを目指し、
国や地域、組織、業態を超えて、
Mission “Finding New Value. Simply For Your Pleasure.” のもと、
お客様に食体験を通じた感動をご提供いたします。
お客様のよろこびのために、
新しい価値の発掘に果敢に挑戦し、
これまでも、これからも、変わり続けていきます。
ビジョン
前述の経営理念に沿った形で、将来どのような会社を目指すのかを具体化したイメージです。
経営理念が思想的なものであったのに対し、ビジョンは将来の会社の姿を示したものになります。
経営企画部門がビジョンから作り上げる場合もありますし、経営陣の鶴の一声で決まることもあります。
世界5,500店舗超、グローバルフードカンパニーを目指す
「手づくり・できたて」の食事を提供し、「臨場感」と共に五感で楽しんでいただくというポリシーを大事にし、世界のあらゆる国と地域で“ローカライズ”と“多様な業態”を武器にスピーディーなグローバル展開を実現します。
経営戦略
前述のビジョンで示した会社の姿になるために行っていく、具体的な取り組みを示したものです。
ビジョン=ゴールの姿、経営戦略=ゴールまでの道のり・地図、と理解しておくと分かりやすいと思います。
ここからが経営企画部門が本格的に考える部分です。
各事業部門が考える戦略を納得がいくまでヒアリング・すり合わせを行い、各事業部門の戦略を足し合わせて会社全体としての戦略を分かりやすく表現します。
経営計画
前述の経営戦略を実行し、ビジョンが達成できた際の、具体的な利益目標です。
投資家が投資を判断するのは、「結果としてこの企業にいくらの価値があるのか(バリュエーション)」です。
経営企画部門は、前述の経営戦略を元に、一定の前提を置きながら具体的な利益計画を立て、企業価値の最大化を目指します。
計画をたてる上で気をつけるべきは、絵に描いた餅にならないようにすることです。
経営計画は、投資家に対するコミットメントです。
達成できないような計画を開示することは、投資家に対して嘘をつくことになるため、企業としての信頼を失うことになります。
(投資家やアナリストも馬鹿ではありませんので、絵に描いた餅の計画はすぐにバレます)
ただし当然ですが、計画を立てた際の前提条件が、市場の変化などで崩れてしまうことはあります(例えば新型コロナウィルスの流行など)。
そういった場合には、背景と概要を投資家に説明をした上で、経営計画を変更することもあります。
中長期計画(2028年3月期)
目標値
連結売上:3,000億円
システムワイド:6,000億円
店舗数:国内1,500超、海外4,000 合計5,500店舗超
事業利益率:12%程度を目指す
営業利益率:10%以上を目指す
前提
☑連結売上:国内 2,000億円、海外 1,000億円 (内、店舗数のFC比率が8割)
☑いずれもM&Aを含みうる
短期予算策定
上記で立てた中長期計画を元に、短期での予算・計画を立てる業務です。
具体的には、年度末にかけて、翌年度の予算策定がメインになることが多いと思います。
短期の計画となるため、中長期計画よりも具体的かつ細かい単位で各事業のKPIを目標化し、各事業部門へ落とし込む必要があります。
(KPI:Key Performance Indicator。重要業績評価指標。達成状況を定点観測することで、目標に向けたパフォーマンスを図れる指標のこと)
予実管理/分析とギャップフィル策定
新しい年度が始まってから、上記で立てた短期予算目標に対しての進捗管理と、乖離に対する分析を行う業務です。
予算に対して実績が足りていなければ、その要因を分析し、差を埋める方法を検討します(ギャップフィルといいます)。
ギャップフィルのための対策は、事業部門と一体となって検討をすすめる必要があります。
事業成長に向けた取り組み(特命案件・新規事業開発・M&Aなど)
経営企画部門は企業としての価値をあげることがミッションです。
そのため、企業価値を上げるためにM&A(企業買収)などを経営企画が主体となって行うこともあります。
※当然ながら、経営理念からずれていない必要はありますが。
はっきり言って、これがめちゃくちゃ面白いです。
常に新しいことだらけですので、知識と経験が一気に身につきます。
ただし逆に言えば、新しいことだらけなので難易度は非常に高いです。
この業務については幅が広いため、私の経験をいくつかご紹介する記事を別途ご用意します。
年間のスケジュールは?繁忙期はいつ?
経営企画部門の業務は前述の通り、主に以下の4つになります。
- 経営戦略・中長期計画の策定
- 短期予算策定
- 予実管理/分析とギャップフィル策定
- 事業成長に向けた取り組み(特命案件・新規事業開発・M&Aなど)
1と2については、第3四半期の終わりから第4四半期にかけて策定することが多いと思いますので、その時期は業務が多忙になります。
(3月決算の会社であれば、12月〜翌3月頃のイメージ)
3についてはルーティン業務として毎月のように行うため、1年を通して緩急の波は少ないです。
ただし、年度末になるほどギャップに対するプレッシャーが強くなるのと同時に打てる対策の幅が狭くなるため、より短いスパンで検討が必要になり、年度末が忙しい傾向にあるのではないでしょうか。
第4四半期は、上記1と2の業務として来年度以降の計画を検討しながら、3の業務として今年度の着地を見極める必要があるので、第4四半期は繁忙期になることが多いです。
一方、4の業務については突発的に発生するものですので、いつが忙しいということは一概には言えません。
ですが、業種によってはある程度は予想できるものはあります。
例えば、ドコモやau、ソフトバンクなどで新しいスマホの料金プランが発表されるのは10月頃が多いですよね。
これは毎年10月頃に新しいiPhoneが発売されるため、iPhoneの拡販のために各社独自の料金プランを発表しているのです。
新しい料金プランを発表するのにどれくらいかかるのか想像もつきませんが、3ヶ月〜半年程度はかかるのではないでしょうか。
そうすると、4月〜9月は忙しくなりそう、ということが前もって予想できるのではないかと思います。
経営企画として働くには?
これまでで経営企画の業務を想像できたでしょうか?
経営企画という業務に少しでも興味を持ってもらえれば幸いです。
経営企画として働いてみたいと思っていただけた方向けに、参考情報です。
これから就職活動する新卒の方向け
マイナビでは経営企画部門でインターンシップができる企業が紹介されているようです。
実際に働いてみて体験してもらった上で、自分に合っているかを見極めていただくのもいいかもしれません。
すでに経営企画としてキャリアを積まれている方向け
経営企画として既にキャリアを積まれている方で、さらにキャリアアップを目指す方には、ハイクラス転職がおすすめです。
中でもビズリーチは、年収1,000万円以上の求人が3分の1以上と年収アップも期待できます。
私も登録しており、個人的感想になりますが、経営企画部門はスカウトからのアプローチが多いという印象です。
スタートアップ企業が経営企画部門を新設するにあたって募集をしているなどのパターンも多そうです。
ゼロから経営企画部門を立ち上げるというのも面白いですね。
いかがでしたでしょうか。
皆さんの助けになれば幸いです。
以上、がありっくでした。
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